コラム

第63回 境界知能に気付かれない子どもたち

2023.11.07

ニュースを見ていると、 

「誰にも知らせずトイレで出産した10代女子はその後...」 

「男子生徒は自宅にあった刃物を手に...」 

など未成年の事件に関するニュースがぽつりぽつりと流れてきます。 

 

見ている多くの人は「若いのになんてことを...」と思うかもしれませんが、 

近年若くして刑に処せられる子ども達の中に、実は学校や対人場面で支援が必要な

「境界知能」が隠れていることが指摘されています。

 

「知能指数」を指す「IQ」は100がその年齢の平均レベルです。 

IQが70未満だと「知的障害」と診断され、療育手帳を取得して 

行政の福祉サービスを得ることができます。 (自治体によって認定基準の数値は多少異なります) 

 

知的グレーゾーンとも言われる「境界知能」は、 

IQが「70以上85未満レベル」のことを言い、療育手帳は取得できません。 

そしてこのケアが届かない「はざま」にいる人たちは

人口の14%、およそ日本人の7人に1人はいると言われています。 

 

会話も一見普通で学校や日常生活も大きな問題なく送れていることも多いため 

周りも気づきにくいのですが、実は下記のような特徴が隠れていることがあります。 

・先の見通しを立てる力が平均より低くその場しのぎの対応になったり 

 衝動的に行動してしまう。 

・授業の内容の理解が小学校低学年程度で止まっている。 

・周囲の会話に合わせて笑っているがあまり内容を理解できていない。 

・問題が生じても「どうしたらよいか」を具体的に考える力が平均より低いので 

 「相談にいく」など具体的な解決方法をとれない。 

 

特に4つ目の「思考し判断する力の弱さ」があるために、本人があまり悩んでいるように見えず 

周囲が本人の生きづらさに気付くことができないのも一つの特徴です。 

 

結果として本人の孤立感が募り、問題が生じた際に過度に混乱して 

衝動的な行動をとってしまうこともあるのです。

 

今後、境界知能の認識が広がり学校や家庭で支援の手が入っていけば

未成年による事件を耳にする機会も減るのかもしれません。